7974 任天堂 6758 SONY 企業比較
ゲーム業界比較
【7974】任天堂
企業紹介
家庭用ゲーム機市場の開祖とでもいうべき企業(本社/京都市南区、岩田聡社長)。1889年創業。花札やカルタなどの製造を主にしていたが、1980年、ゲームメーカーへと転身。83年、家庭用ゲーム「ファミリーコンピュータ」の発売によりファミコンブームを巻き起こし、現在の地位を築く。その後、89年に携帯ゲーム機「ゲームボーイ」を発売、家庭用ゲームの世界を屋外に広げた。プレイステーションの発売後、据え置き型でのシェアをソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)に奪われ、ゲーム業界での主導権を失っていたが、ペン入力対応の「ニンテンドーDS」、独自コントローラ付きの「Wii」を発売、これまでゲームに縁が薄かった中高年や女性を取り込み、市場を拡大することで、再びゲーム業界トップへ返り咲いた。
【6758】SONY(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)
企業紹介
第一機種目として1994年12月3日に発売された初代PlayStationは、全世界で約1億200万台が売り上げられる大ヒットとなった。その後も後継機や携帯機などが発売されている。なお、同社は「ゲーム機」だけでなく「コンピュータエンタテインメントシステム」といった表現も使用している。また、近年では従来のハードごとではなく、PlayStation VRをも含む全体が1つのプラットフォームという考え方にシフトしている。
差別化戦略の面が大きいと感じる。任天堂ゲーム機の最新版は全て形状や使用方法が異なっている。さらには、ケータイアプリ「ポケモンGO」の成功により株価も急騰したため戦略が成功したと言える。
新規開拓戦略の面もある。最近の任天堂ゲーム機の特徴として、やりこむゲームというより多人数でワイワイ遊ぶものが多いように感じる。CMでも「家族や友達と楽しくプレイ」というスタンスであることを読み取れる。さらに体を動かしてプレイする「Wii」は、ゲームに関心の少ない女性をうまくターゲットできていたと思う。
その反面、画質という面では少々劣っている。しかし、ターゲット層を考えると、敢えてコストのカットで収益性を優位にしているのかもしれない。さらに、かなりの老舗というイメージがあるため安定性という面でも優れていると考える。
こちらも差別化戦略の面がある。親会社SONYの広いビジネス基盤を利用し、プレステは、ゲーム機だけでなくパソコンや音楽・映像プレイヤーの一面もある。ターゲットの層は10代〜30代、40代とかなり幅広い。さらに最新機種「PSVR」は最新技術を結集させたものでかなりの人気だ。
任天堂に対して、画質にかなりの力を入れており、コストの面では劣っているように思う。しかし、長年シリーズ化しているプレステ本体の売り上げ、ソフトの充実性から収益性、成長性を感じることができる。
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
7974 |
6754 |
ROE(自己資本利益率) |
% |
2013/03 |
0.59 |
1.69 |
|
|
2014/03 |
-1.98 |
-5.77 |
|
|
2015/03 |
3.66 |
-5.51 |
|
|
2016/03 |
1.41 |
6.18 |
|
|
2017/03 |
8.51 |
2.95 |
|
|
2018/03 |
10.86 |
17.96 |
ROEに関していうと任天堂の方が安泰しており、SONYはブレが大きい。
両者において、新作ゲーム機が好評であったこともあり、2015・2016にプラス値になっている。
・収益性
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
売上高総利益率 |
% |
2013/03 |
22.09 |
33.98 |
|
|
2014/03 |
28.55 |
33.82 |
|
|
2015/03 |
39.03 |
35.79 |
|
|
2016/03 |
43.8 |
36.26 |
|
|
2017/03 |
40.67 |
37.49 |
|
|
2018/03 |
38.23 |
39.28 |
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
% |
2013/03 |
-5.73 |
3.33 |
|
|
|
2014/03 |
-8.12 |
0.34 |
|
|
2015/03 |
4.51 |
0.83 |
|
|
2016/03 |
6.52 |
3.63 |
|
|
2017/03 |
6 |
3.8 |
|
|
2018/03 |
16.82 |
8.6 |
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
% |
2013/03 |
1.65 |
3.56 |
|
|
|
2014/03 |
1.06 |
0.33 |
|
|
2015/03 |
12.83 |
0.48 |
|
|
2016/03 |
5.71 |
3.76 |
|
|
2017/03 |
10.3 |
3.31 |
|
|
2018/03 |
18.88 |
8.18 |
収益性については、概ね任天堂の方が優っている。画質カットによるコスト軽減の効果で売上高総利益率が2015頃から上がっているのかもしれない。SONYにおいても2016から数値が伸びているため「PS4」「PSVR」の人気度が読み取れる?
・効率性
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
使用総資本回転率 |
回 |
2013/03 |
0.45 |
0.49 |
|
|
2014/03 |
0.42 |
0.53 |
|
|
2015/03 |
0.41 |
0.53 |
|
|
2016/03 |
0.38 |
0.5 |
|
|
2017/03 |
0.35 |
0.44 |
|
|
2018/03 |
0.68 |
0.47 |
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
固定資産回転率 |
% |
2013/03 |
2.63 |
0.68 |
|
|
2014/03 |
2.13 |
0.72 |
|
|
2015/03 |
2.05 |
0.72 |
|
|
2016/03 |
1.9 |
0.67 |
|
|
2017/03 |
1.61 |
0.59 |
|
|
2018/03 |
3.08 |
0.63 |
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
棚卸資産回転日数(日) |
|
2013/03 |
670.07 |
198.77 |
|
|
2014/03 |
707.49 |
184.48 |
|
|
2015/03 |
704.31 |
186.65 |
|
|
2016/03 |
766.5 |
189 |
|
|
2017/03 |
806.68 |
205.25 |
|
|
2018/03 |
417.92 |
203.6 |
効率性については、あまり違いが見れなかった。しかし、棚卸資産回転日数において大きくSONYが上回っていた。つまり、効率性においては少々SONYの方が上回っているかもしれない。
・安全性
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
% |
2013/03 |
613.06 |
84.5 |
|
|
|
2014/03 |
657.97 |
87.9 |
|
|
2015/03 |
760.99 |
88.46 |
|
|
2016/03 |
1037.35 |
86.88 |
|
|
2017/03 |
619.6 |
83.42 |
|
|
2018/03 |
459.14 |
92.09 |
指標 |
位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
% |
2013/03 |
488.07 |
54.88 |
|
|
|
2014/03 |
529.37 |
59.07 |
|
|
2015/03 |
673.28 |
60.53 |
|
|
2016/03 |
963.12 |
59.13 |
|
|
2017/03 |
571.47 |
57.81 |
|
|
2018/03 |
380.4 |
68.04 |
指標 |
単位 |
月次 |
||
|
|
|
|
|
固定比率 |
% |
2013/03 |
20.83 |
481.9 |
|
|
2014/03 |
25.24 |
492.83 |
|
|
2015/03 |
21.87 |
502.2 |
|
|
2016/03 |
23.76 |
506.49 |
|
|
2017/03 |
26.24 |
532.78 |
|
|
2018/03 |
27.06 |
468.07 |
安定性においては、圧倒的に任天堂の数値が優っている。この結果は予想通りであった。しかし、固定比率の差については要因がはっきりと見えない。
任天堂もSONYもとても優秀な企業ではあるが、それぞれの経営スタンスには大きな違いが見つけられた。特に際立っていたのは、任天堂の安全性である。200%超えているのが望ましいと言われている中で、これだけの数値を叩き出しているのは、安全性を重視した経営戦略をとっていることが明確である。
懸念としては、「switch」と「PS4」「PSVR」ともにかなりのヒットを成し遂げているため、消費者の期待が上がり、次回作の売れ行きに影響を及ぼしてしまわないかが心配である。
しかし、どちらの企業もROEが上り調子のように見えるため、ゲーム産業自体が盛り上がっていることに気がついた。スマホゲームの普及に伴い、ゲーム機離れが広がっているという話を聞いたことがあったが、財務分析を行なってみて、消費者のゲーム機離れは広がっていたのかもしれないが、その要因としてスマホゲームを挙げているのは少々、誤解があるのかもしれない。消費者は、スマホゲームと家庭用ゲーム機とを別々に認識しており、同一視はされていないと感じた。